#88 「ちょっと」のいろいろな使い方
みなさん、こんにちは。「てくてく日本語」日本語教師のたまです。
この番組は、日本語を勉強している人のためのpodcastです。
日本の生活や文化、日本語のことについて、できるだけわかりやすい日本語でお話します。
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みなさん、こんにちは。だんだんあたたかくなってきました。
いま、山は桜が満開です。わたくしも先日、お花見に行ってまいりました。動画を撮りましたので、またYoutubeにアップしたいと思っています。どうぞお楽しみに。
さて、今日は、日本語の「ちょっと」という言葉について話してみたいと思います。
「ちょっと」って、いろいろな意味がありますよね。今日はその使い方を、いくつか紹介します。
まず、一番わかりやすいのは、「少し」という意味ですね。
たとえば
「ちょっと寒いですね」
「塩をちょっと入れるとおいしいですよ」
こういう時の「ちょっと」は、「少し」「少しだけ」という意味です。これは、みなさんもよく知っていると思います。
次は、お願いするときの「ちょっと」です。
たとえば
「ちょっと見せてもらえますか?」
「ちょっとお聞きしたいんですが…」
これも、「少し」プラス「お願い」ですね。
でも、「ちょっと」と言うことで、相手にプレッシャーをかけずにお願いすることができます。「プレッシャーをかける」というのは、「早くやって!」とか「絶対やってください!」というように、相手にストレスを与えるように強く言うことです。「ちょっと」は、そうならないように、やさしく、軽くお願いする言葉なんですね。
次は、断るときの「ちょっと」です。
たとえば
「今はちょっと…」
「う〜ん、それはちょっと難しいかも…」
この場合の「ちょっと」は、「本当はできません」「NOです」という意味。やわらかく、やさしく断る言い方です。これも、日本語らしいですね。ストレートに言わない文化があるからです。「ストレートに言う」というのは、「できません」「いやです」「いりません」など、はっきり言うことです。日本語では、それをそのまま言うのは少し失礼に感じられることがあります。だから、「ちょっと…」のように、やわらかい表現を使うんです。
それから、感情をやわらげるときにも「ちょっと」を使います。
たとえば
「ちょっとびっくりした!」
「ちょっとイラッとした」
これは、強すぎる気持ちをやさしく伝えるときの「ちょっと」です。たとえば、「とても怒った」と言うと、聞いている人もちょっとびっくりしますよね。だから、「ちょっとイラッとした」など、感情をやわらげて伝えると、相手にもやさしく聞こえます。感情をやわらげるというのは、怒りやびっくりなどの気持ちを、少し小さくして伝えるということです。
「ちょっと」という言葉は、とても便利ですね。
でも、便利なだけでなく、日本人の考え方や文化にも関係がある言葉だと思います。
言いたいことをやさしく伝える。
直接言わない。
相手の気持ちを考える。
「ちょっと」には、そんな日本語の特徴があらわれているのかもしれません。
そして、最後にちょっと、おまけのお話です。実は、「ちょっと」には、本当は「少し」ではない意味で使われることもあります。
たとえば
「これ、ちょっと高いね〜」
「あの人、ちょっと変わってるね」
この「ちょっと」は、「少し」というより、「けっこう」「かなり」という意味に近いことがあります。びっくりですよね?
でも、日本語では本当の気持ちをやわらかく伝えるために、あえて「ちょっと」と言うことがあるんです。だから、「ちょっと高い」は「けっこう高い」、「ちょっと変わってる」は「かなり変わってる」ということもあります。
今日はいろんな「ちょっと」の使い方を紹介しました。
あなたがよく使う「ちょっと」は、どのタイプですか?
自分の国のことばにも、こんなふうにいろいろな意味を持つ言葉がありますか?よかったら、ぜひ教えてくださいね。
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では、最後に、今日紹介した「ちょっと」の使い方を、もう一度まとめてみましょう。
少し という意味
たとえば
「今日はちょっと寒いですね」
「ここに塩をちょっと入れてください」
→ 少しだけ、という意味です。
やさしくお願いするとき
たとえば
「ちょっと見せてもらえますか?」
「ちょっとお聞きしたいんですが…」
→ 相手にやさしく、ていねいにお願いしたいときに使います。
やわらかく断るとき
たとえば
「今はちょっと…」
「それはちょっと難しいかも…」
→ はっきり「NO」と言わずに、やんわりことわる言い方です。
気持ちを小さくして言うとき
たとえば
「ちょっとびっくりした」
「ちょっとイラッとした」
→ 気持ちが大きすぎないように、やさしく伝えたいときに使います。
本当は「けっこう」「かなり」という意味のときも
たとえば
「このバッグ、ちょっと高いね」
「あの人、ちょっと変わってる」
→ ほんとうは「けっこう高い」「かなり変わってる」という意味かもしれません。
こんなふうに、「ちょっと」にはいろいろな意味があります。
ふだんの会話でも、ぜひ使ってみてくださいね。
Podcastの説明欄にも、今日のフレーズをまとめて書いておきますので、よかったら見てみてください。
実は、「ちょっと」は、「〜やすい」「〜にくい」といっしょに使われることも多いんです。
この文法については、Patreonの特別エピソードで解説しています。もしよかったら、チェックしてみてくださいね。
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いかがだったでしょうか。
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今日も最後までお聞きいただきありがとうございました。
それでは、今日はここまで。
また次回、お会いしましょう。
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