#51 映画『青春18×2 君へと続く道』【中・上級】

みなさん、こんにちは。「てくてく日本語」日本語教師のたまです。
この番組は、日本語を勉強している人のためのpodcastです。
日本の生活や文化、日本語のことについて、できるだけわかりやすい日本語でお話します。

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みなさん、こんにちは。
わたしは先日、映画館に映画を見に行きました。
映画のタイトルは『青春18×2 君へと続く道』といいます。
この映画は、日本と台湾の合作(がっさく)です。
合作というのは、共同で作ること、一緒に作ることです。

今回は、この映画のことをお話ししたいと思います。
少し難しい言葉や固有名詞も出てきます。なので、今回の内容は中級から上級者向けになります。
初級の方も、音声の速度を遅くしたり、わからない言葉を調べたりして聞いてみてくださいね。
ウエブサイトにスクリプトがありますので、参考にしてください。

最初に簡単にあらすじ、ストーリーを紹介しますね。

はじまりは18年前の台湾。高校生のジミーは、夏休みに、アルバイト先のカラオケ店で、日本人のバックパッカー、アミと出会います。二人はだんだん親しくなり、ジミーはアミに恋心を抱きます。でもアミは突然日本へ帰ってしまいます。18年後、36歳のジミーは仕事に失敗し、故郷に帰ってきます。そこでアミから届いたハガキを見つけ、日本を旅することを決めます。日本を旅しながら、アミとの出会いを思い出し、人生を見つめ直していくストーリーです。

最初にこの映画のニュースを聞いた時、これはぜひ観に行かなければ!と思いました。
それは、台湾人のシュー・グァンハン(許光漢)さんが主演だったからです。

わたしは以前台湾にいた時、シュー・グァンハンさんが出ていたドラマをよく観ていました。日本語のタイトルは『時をかける愛』、中国語のタイトルは『想見你』です。その時、彼は、高校生から大人まで、一人で4つの役を演じ分けていました。その演技力がほんとうにすばらしかったんです。

今回の映画でも、高校生から大人まで演じるということで、楽しみにして観たんですが、もう、期待通り、というより期待以上でした!
高校生の役を演じていても、全然違和感がない。むしろ、こういう高校生、いるよなあ〜って思ってしまうくらい、高校生らしい様子でした。
特にすごいなと思ったのは、高校生のジミーが初めて日本人のアミと出会ったシーン。ジミーの日本語が、いかにも日本語を勉強し始めたばかりの台湾人高校生のような日本語だったんですね。わたしは台湾で高校生に日本語を教えたことがありますから、その生徒さんたちのことが思い浮かんで、とても懐かしかったです。演技がリアルで、ほんとにすごいなと思いました。
あ、でも、アミは最初からナチュラルスピードの日本語で話してて、しかもストーリー上けっこう重要な難しい日本語フレーズがあったんだけど、あれをジミーが聞き取れているという設定はちょっと不自然だったかな。

この映画は、18年前の台湾と、現代の日本の日本各地の場面が交互に出てきます。
なので、シュー・グァンハンさんは、18歳と36歳の役を演じ分けるだけでなく、中国語と日本語も使い分け、台湾と日本という違う環境で演技をする。すばらしい演技力だなあとつくづく思いました。

台湾の場面は、ほとんど台南で撮影していました。あまり街の中の様子は映っていなかったけれど、有名な手描きの看板がある映画館が出てきました。あの映画館、中に入ったことはないですが、看板を見に行ったことがあります。映画館の看板って、今はほとんど写真ですよね。でも昔は、職人さんが実際に手で描いていました。手描きで描いていました。台南の映画館は、今では数少ない手描きの看板が有名なんです。

日本の場面は、各地を旅する、いわばロードムービー形式でした。

日本の風景では、松本が出てきました。長野県の松本市。わたしは学生の頃松本に住んでいました。なので、映画の中で、シュー・グァンハンさんが、私がよく知っている松本の風景の中にいる、ということに密かに感激していました。

他には、鎌倉(かまくら)、飯山(いいやま)、長岡(ながおか)、津南(つなん)、只見(ただみ)などを電車に乗って、ぐるーっとまわっています。これ、実際はすごく遠回りなんです。目的地の只見に、すぐに、まっすぐ行くんじゃなくて、わざわざ遠回りして行ってるんですよね。

タイトルの「青春18」ですが、これにはいろんな意味があると思われます。18歳の時のアミとの出会い、それから18年たって36歳になってわかること。この映画は単なる恋愛映画ではなく、ジミーというひとりのシャイな台湾青年の成長の映画なんだな、と思います。

それから、映画の中ではあまりはっきり示していなかったけれど、日本には「青春18きっぷ」というきっぷがあるんです。JRの普通列車と快速列車が5日間乗り放題になるきっぷです。原作を読んだんですが、原作では、ジミーはその「青春18きっぷ」を使って日本を旅しているんですね。「青春18」というタイトルはこのきっぷとも関係あるんです。

普通のきっぷは、出発地と目的地が決まっています。でも「青春18きっぷ」は、途中下車したり、その時の気分で行き先を変えたりすることができるんです。映画の中で、雪の中を電車が走るシーンがありましたよね。その電車で出会った青年が「ジミーさん、おりちゃいましょうか」と途中下車を誘う場面がありました。そんな自由さがあるのが、「青春18きっぷ」のいいところです。

「青春18きっぷ」は新幹線や特急列車には乗れません。すべての駅に止まる各駅停車の普通列車と、少し早い快速列車だけです。ですから、「青春18きっぷ」を使って旅をすると、とても時間がかかります。
ジミーは、各駅停車の普通列車で、ゆっくりゆっくり、アミの故郷只見へ向かっています。何もすることのない電車の中で、自分と向き合い、過去と向き合う時間がたっぷりある。ジミーには、そんな時間が必要だったんでしょうね。

この映画を見て、ひとりで電車に乗って知らない街を旅してみたいなあと、思いました。みなさんも、もし、日本の観光地ではない、田舎を旅したいなら、ローカル線に乗ってゆっくりゆっくり旅してみてください。新幹線や特急列車で、あっという間に目的地に着く旅と違って、各駅停車の旅は、日本のいろいろな景色や、生活する人の姿を見ることができます。日本の大きさ、自然の豊かさ、人の温かさなど感じることができると思います。そしてたっぷり時間を使って、自分や人生と向き合うことができるのも、旅の良さだと思います。

最後に、ちょっとだけネタバレになることを話します。もし、まだ映画を見ていない人は、このあと25秒くらいは、音声を聞かないでくださいね。

あのですね。高校生のジミーが自分の部屋で日本語の勉強をしている場面がありましたよね。机に向かって教科書を開いている。あの時練習していたフレーズが「遅れてごめんなさい」なんです。このフレーズが、伏線になって、後半効いてくるんですよね〜。そう、アミのお母さんにあった時・・・。これを知った時はちょっとゾクッとしました。
はい、ネタバレは以上です。

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今回は映画『青春18×2 君へと続く道』について語りました。みなさんが住んでいるところでは、この映画が上映されているかな?もし機会があったら、興味があったら、見てみてくださいね。この映画を見たことがあれば、よかったら感想を教えてくださいね。

このPodcastを気に入っていただけましたら、フォロー・評価いただけるととっても嬉しいです。
また、リクエストや感想などのコメントもお待ちしております。
今日も最後まで聞いてくださってありがとうございました。
それでは、今日はここまで。
また次回、お会いしましょう。

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