#30 「今すぐ逃げること!」N3
みなさん、こんにちは。日本語教師のたまです。
この番組は、日本語を勉強している人のためのpodcastです。
日本の生活や文化、日本語のことについて、できるだけわかりやすい日本語で話します。
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2024年になりました。新しい年が始まりました。
普通なら「あけましておめでとうございます」と言ってお祝いする日ですが、大きな地震が起きてしまいました。さらに翌日、次の日、1月2日には、羽田空港で、飛行機が衝突(しょうとつ)する事故が起きました。
災害や事故で亡くなられた方に心よりご冥福(めいふく)をお祈りします。また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
1日も早く、安心安全な、穏やかな日常が過ごせますように願っています。
1月1日、元旦(がんたん)は、日本にとって大変な日になってしまいました。
今回お話ししたいのは、「今すぐ逃げること!」です。
1月1日元旦、わたしは休みですから、朝ゆっくり起きました。そして、リビングルームで、家族と一緒にお正月の料理を食べました。お雑煮(ぞうに)と、おせち料理を食べました。
それから、こたつに入って、新聞を読んだり、本を読んだり、ゲームをしたりしました。こたつは、低いテーブルの上にふとんをかけて温まる暖房器具(だんぼうきぐ)です。こたつは足元が暖かいので、気持ちいいです。つい眠くなります。朝起きてそのまま、ねまき、パジャマを着たまま、こたつでごろごろ、寝たり起きたりしていました。
それから、1時半にテレビをつけました。サッカーの試合を見るためです。サッカー日本代表とタイ代表の試合がありました。サッカーの試合をテレビで見るのはとても久しぶりで、おもしろかったです。試合は5対0で日本代表が勝ちました。
試合が終わって、監督(かんとく)のインタビューが始まりました。その時、突然「緊急地震速報(きんきゅうじしんそくほう)」の字幕、テロップが流れました。「緊急地震速報」は、特に大きい地震が起こったときに、震度(しんど)、地震の大きさや、地震で揺れる場所を予想(よそう)して発表するものです。
そしてすぐに、テレビの画面(がめん)がニュースに切り替わりました。能登半島の近くで地震が発生したことがわかりました。でも、地震の大きさはよくわかりませんでした。
それからまもなく、わたしのうちも揺れ始めました。能登半島からわたしが住んでいるところまで遠いので、そんなに大きい揺れではありませんでした。でも、かなり長い時間揺れました。こんなに遠いところまで揺れるなんて、相当大きい地震だ、と感じました。
そして「津波警報(つなみけいほう)」、「津波警報」は、津波が発生する可能性があるときに発令(はつれい)される警報です。この「津波警報」が発表されたとたん、テレビのアナウンサーが強い口調(くちょう)、言い方で、「今すぐ逃げてください」「高いところを目指して逃げてください!」「あきらめないで逃げてください!」「命を守るため、一刻も早く逃げてください!」と、呼びかけました。
この話し方に、最初少し驚きました。ふつう、テレビのアナウンサーは、こんな強い言い方はしません。
さらに、「大津波警報(おおつなみけいほう)」が発令されたときは、「今すぐ逃げること!」「今すぐ可能な限り、高いところに逃げること!」と、もっと強い言い方で呼びかけていました。
ふだんとは違う、強くて厳しい話し方。これには理由があります。
人は、危険な状況、危ない場合でも、「たいしたことない」「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」と思ってしまう心理があります。自分にとって都合がいいように考えたり、小さく判断したりすることがあります。これを「正常性バイアス」といいます。何か危ないことが起こっていても、「まだ大丈夫」と思っているうちに、逃げ遅れてしまう原因になります。
2011年の東日本大震災では、津波から逃げ遅れた人がたくさんいました。このアナウンサーの話し方は、津波から逃げ遅れないようにするために、考えられたものだそうです。
「今すぐ逃げること!」という呼びかけは、ほんとうに逃げないと命が危ない、急がなければならない、ということを伝えるための話し方でした。
お正月、わたしはのんびり過ごしていました。パジャマのままで、うとうとしていました。もし、大きな地震が起こったら、すぐに逃げることができるかどうか、わかりません。どうしたらいいか迷っているうちに逃げ遅れるかもしれません。
災害があった時、どんな行動をしたらいいか、わからない時があります。「今すぐ逃げること!」という強い呼びかけは、効果があると思います。
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ここで少し文法の説明です。
「今すぐ逃げること」の「こと」、「〜こと」、これはN3の文法です。
「〜しなさい」「〜してはいけない」という意味の文型です。注意する時や指示(しじ)、命令をする時に使われます。
動詞の辞書形に接続すると「〜しなさい・〜しろ」
動詞のない形に接続すると「〜してはいけない・〜するな」という意味になります。
「今すぐ逃げること」は、「今すぐ逃げなさい」「今すぐ逃げろ」という意味です。
「逃げなさい」「逃げろ」は、相手が目の前にいて、直接言う時の言い方です。
テレビのアナウンサーの場合、相手は目の前にいません。そして、「逃げてください」は、命令の意味が弱いです。もっと強く命令、指示の意味を伝えたい、でも、相手が目の前にいないので、「逃げること」という表現が一番いいのだと思います。
この命令の意味の「〜こと」は、必ず文末に使います。「〜ことです」とか「〜ことだ」というと、意味が違いますので、気をつけてくださいね。
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はい、今回は、テレビで聞いた言葉「今すぐ逃げること」について、お話ししました。
大変なお正月になってしまいました。どうか早く落ち着いて、穏やかな日常が過ごせるようにと祈るばかりです。
さて、このPodcastですが、わたしは来週から、旅行に行く予定です。ですので、旅行中はお休みしようと思っています。でも、もしチャンスがあったら、録音するかもしれません。まあ、できれば続けたいですが、無理はしないようにしようと思っています。
このPodcastを気に入っていただけましたら、フォロー・評価いただけるととっても嬉しいです。
今日も最後までお聞きいただきありがとうございました。
それでは、今日はここまで。
また次回、お会いしましょう。