110 歌舞伎(かぶき)と映画「国宝(こくほう)」|Kabuki and the Film “Kokuhō”|歌舞伎與電影《國寶》

みなさん、こんにちは。「てくてく日本語」日本語教師のたまです。
この番組は、日本語を勉強している人のためのpodcastです。
日本の生活や文化、日本語のことについて、できるだけわかりやすい日本語でお話します。

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今日は、日本の伝統芸能「歌舞伎(かぶき)」、そして最近話題の映画『国宝(こくほう)』について、お話ししようと思います。

まず「歌舞伎」。みなさんは、「歌舞伎」を知っていますか?

「歌舞伎」は日本の伝統芸能のひとつです。歌舞伎は江戸時代にはじまりました。もう400年以上の歴史があります。最初は、京都で、出雲阿国(いずものおくに)という女性が踊った「かぶき踊り」が始まりです。そこから少しずつ形を変えて、今の歌舞伎になりました。

「歌舞伎」の「歌(か)」は音楽のことです。「舞(ぶ)」は踊り、「伎(き)」は役者や役者の演技、芝居のことです。「歌舞伎」は、その名前の通り、音楽と踊りと芝居で成り立っています。

歌舞伎には、ほかの演劇とちがう特徴がたくさんあります。

まず、歌舞伎の役者は男性だけです。女性の役も男性が演じます。この女性の役のことを「女方(おんながた)」といいます。姿も声もまるで女性のようで、男性が演じているとはとても思えません。この美しい「女方」は歌舞伎の大きな魅力の一つです。

それから、歌舞伎では顔に特別なお化粧、メイクをします。このお化粧の色には意味があって、お化粧を見ただけで、登場人物がどんな性格か、どんな身分かがわかるんです。たとえば、白は、身分が高い人、偉い人、イケメンの主人公です。白は正義、いい人を表します。ただ、悪い人でも、身分が高い人やイケメンなら白の化粧をすることが多いです。一方、赤は悪い人です。主人公の敵やその家来などです。

さらに赤や青の線を顔に描く「隈取(くまどり)」という派手な化粧をします。赤い線をたくさん描いている登場人物は、スーパーマンのような正義の味方です。青の隈取をしている登場人物は、大悪人(だいあくにん)、すごく悪い人や怨霊(おんりょう)のことが多いです。

怨霊というのは、恨み(うらみ)や怒りを持って死んだ人の霊(れい)のことです。日本の昔の考えでは、そういう霊は生きている人に悪いことをする、と信じられていました。

こんなふうに歌舞伎は登場人物のお化粧を見ることで、「主人公」か「悪い人」か「怨霊」か、ということがわかるんです。物語が難しくても、お化粧をよく見れば、物語の流れがなんとなくわかるんです。おもしろいですよね。

歌舞伎では豪華な衣裳もぜひ見てほしいところです。着物を何枚もたくさん重ねた衣装は、ほんとうに豪華で美しいです。

そして音楽は、すべて生音(なまおと)。その場で演奏されています。三味線や太鼓など、日本の伝統的な楽器が使われています。

舞台から客席にのびる「花道(はなみち)」、この花道を役者が歩く姿は、とても迫力があります。

さらに観客は、役者が見せ場をむかえると「成田屋!」などと掛け声をかけます。これは応援の文化で、歌舞伎の大きな魅力のひとつです。

物語の種類もさまざまです。昔の戦いや事件を描く「時代物」、江戸時代の町人の生活や恋愛を描く「世話物」、そして踊りを中心にした「舞踊もの」などがあります。

現代の歌舞伎は進化していて、外国語の字幕がある劇場もあり、外国の方も理解しやすくなっています。最近ではアニメやマンガをもとにした新作歌舞伎も人気です。2005年にはユネスコの「無形文化遺産」に登録され、世界でも注目されています。

さて、最近、この歌舞伎をテーマにした映画がとても話題になっています。それが『国宝』です。

この映画は、作家・吉田修一さんの小説をもとにしています。物語は、歌舞伎の世界で生きる二人の男性を中心に描かれています。

一人は立花喜久雄(たちばな きくお)。やくざの家に生まれ、お父さんを亡くして歌舞伎の世界に入りました。血筋には頼らず、自分の努力と才能で役者の道を進みます。もう一人は大垣俊介(おおがき しゅんすけ)。歌舞伎の家に生まれ、血筋を背景に舞台に立ちます。

血筋とは、先祖代々親から子へ続く血のつながりのことです。歌舞伎の世界は基本的に、親から子へ芸が受け継がれていきます。

この二人はライバルであり、同時に深く結びついた存在です。ぶつかり合いながらも成長し、芸を高めていく姿が描かれています。

映画「国宝」の大きな見どころは、女方(おんながた)の演技です。喜久雄を演じる吉沢亮さんと、俊介を演じる横浜流星さんは、女方の動きや声を徹底的に練習し、本物の歌舞伎役者のように演じました。

わたしも映画を見にいきましたが、ふたりの演技は本当にすばらしかったです。歌舞伎の舞台の映像も迫力があって、とても美しかったです。

この映画は6月に公開されて、今もずっと上映されています。このPodcastを録音している今の時点で、なんと興行収入が130億円を超えました。興行収入とは、どれくらい人気があって、どれくらいお金を集めたかということです。ふつう、興行収入が30億円をこえると「大ヒット」といわれます。なので、130億円はものすごいことです。

「国宝」は、海外でも上映されています。フランス、中国、韓国、ニュージーランドなどの国際映画祭でも上映されました。そして台湾では10月23日から劇場公開されるそうです。

3時間というとても長い映画ですが、機会があればぜひ、見に行ってみてくださいね。

では、今日のお話をまとめましょう。歌舞伎は四百年以上続く伝統芸能で、男性だけが演じます。隈取や豪華な衣装、花道や掛け声など、ユニークな特徴があります。物語にはいくつかの種類があり、今も進化を続けています。

映画『国宝』は、歌舞伎役者として生きる二人の男の人生と芸への情熱を描いた物語です。女形の演技や長い人生をえがくストーリーが大きな見どころです。

最後におまけの表現です。
「十八番(おはこ)」という言葉。「十八番」と書いて「おはこ」と読みます。もともとは歌舞伎役者が得意な演目のことです。たとえば「坂田藤十郎の「おはこ」は『曽根崎心中』だ」というふうに言います。現在は、一般に「得意なこと」という意味で使います。たとえば、カラオケで「あなたの「おはこ」は何?」といえば「あなたの得意な歌は何?」という意味です。

いかがでしたか?歌舞伎や映画『国宝』について、新しい発見があったらうれしいです。感想や質問があれば、ぜひメッセージで教えてください。次回は「百人一首」についてお話しします。日本の古典文化を一緒に楽しみましょう。


では、今日のエピソードにてきた単語練習しましょう。まず、単語をゆっくりみます。そのあと、ナチュラルスピード でみます。リピートやシャドウイングの練習使ってみてください。WEBサイトに英語中国もついています。参考にしてくださいね。

それでは、めます。

No.語彙ふりがな(発音)英語中国語
1歌舞伎かぶき¯Kabuki (traditional Japanese theater)歌舞伎
2芝居しばい¯play; drama; performance戲劇
3女形おんながた¯male actor playing female roles旦角
4怨霊おんりょー¯vengeful spirit怨靈
5恨みうらみ\resentment; grudge怨恨
6血筋ちすじ¯bloodline; lineage血統
7興行収入こーぎょーしゅ\ーにゅーbox-office revenue票房收入
8十八番おはこ¯specialty; one’s forte拿手好戲


今日も最後までお聞きいただきありがとうございました。

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それでは、今日はここまでとなります。みなさん、よい週末をお過ごしください。
また次回、お会いしましょう。


*「おんながた」の漢字は「女方」「女形」両方あります。

<参考>

【歌舞伎の魅力とその楽しみ方ガイド】日本の伝統芸能を体感しよう!

https://www.gltjp.com/ja/article/item/20707

110 歌舞伎(かぶき)と映画「国宝(こくほう)」|Kabuki and the Film “Kokuhō”|歌舞伎與電影《國寶》” に対して2件のコメントがあります。

  1. スマティ より:

    podcastを聞いて歌舞伎の情報だけでなく色々な新し言葉も学ぶことができた。ゆっくりの話だったから、よくわかることができて本当にありがとうございました

    1. tama より:

      スマティさん コメントありがとうございます!これからもいろいろなテーマで話すので、たくさん聞きに来てくださいね!

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